ポポキラニは、埼玉県狭山市にある小さなメインクーンのキャッテリーです。2008年からブリードを始め、同年9月から主にTICAアジアのショーに参加しています。


Cattery POPOKILANI is a small Mainecoon cattery located in Sayama-shi, Saitama prefecture, which is quite famous by "Green Tea" field, about one hour far from Tokyo. Our cattery just started from April, year 2008. And started attending TICA Asia Region from Sep. 2008.

Monday, October 22, 2018

マイケルと言う名の猫(2)

2010年7月31日 (土)

マイケルと言う名の猫(2)



前回はこちら→マイケルという名の猫

「この子、どうしたんだろう・・・ 捨てられちゃったのかな~」
「肉球は汚れていないから、そうだとしてもまだそんなに時間が経っていないようだね」
「ここじゃ、すぐ車に轢かれちゃうよ~」
「○×、△※××?(君、ママはどこ? ママとはぐれちゃったの?」」
あつい息がぼくの顔にかかる。 やめてくれ~! 
そんなに顔を近づけなくても聞こえるよ~!
「そこん家は猫なんか飼ってないよ!」 
知らないおじさんが通りすがりに、訳知り顔でそんなことを叫んで行った。
「しょうがないよね~ この子ここにいたら生きていけないよ~ 死んじゃうよ・・・」
「連れて帰るか・・・」
「でも、ドンとレオが何て言うか・・・」
ドンとレオ? なんだ、食い物か? 
とにかく、ぼくはお腹が空いているの!


空も赤から黒っぽい色に変わってきたし、お腹は相変わらず空いているし・・・
次の瞬間、ぼくの肉球はまたもやごわごわした地面を感じていた。
「じゃ、にゃんちゃん、バイバイ~」
「きっと誰かが君を連れて行ってくれるよ・・・ ごめんね、ごめ・・・」
最後の“ごめ・・・”の言葉は“ゴーオッ!”という物凄い音にかき消されていた。 
白い四角いものが、ぼくとニンズの横を凄い勢いで走り去って行った。
太ったおじさんと、ちりちり頭のおばさんは歩き出していた。
そして、ぼくはトコトコとニンズの後ろを追いかけた。
「ついて来るよ」
「一回抱き上げたから・・・ ついてくるよな~、そうしたら・・・」
「やっぱり、このまま連れて帰ろう」
「うん、ここじゃあ、すぐ事故にあうだけだものな」
そうして、ぼくはまたあの不思議で懐かしい感覚に包まれた。
今度はさっきよりもしっかりと!
ぼくがもっと小さいころに聞いた、“どくどく”という音がしっかりと聞こえるほどに・・・
さて、一回でも抱き上げてしまった行きがかり上
相方と私はこの子猫を家に連れて帰ることにしました。

このままここに居ても、誰かに拾われない限り
この子は数日も生き延びるチャンスはないだろう・・・ということで。

でも、きっと我々の本心は、そんな綺麗ごとよりもこの子の不思議な魅力の虜になったのだと思います。 
四角い箱がいっぱいゴー、ゴーッと通る道をぼくらは歩いた。 
もっともぼくは抱き上げられて、おばさんの胸にだっこされたままだったけど。
「どこに行くの?」、「ごはんはまだ?」、「お空が暗くなっていくよ」・・・ 
ぼくは、ずっとこの知らないニンズに話しかけ続けていた。
「この子、なーご、なーご鳴き通しだね」
「不安だろうね。 われわれもだけどね・・・」
二人はわけのわからない会話をしていた。
不安なのはぼくの方だ! ニンズじゃないはずなのに~!
そして、ぼくの目にうつるのは、もう暗いものばかり。
たまに、2つ目の凄い明るい目を持つ四角い箱の光だけ。
******

空気が何となくひんやりしてきて、あたりは土の匂いと、葉っぱの匂いだけになっていた。
ぼくを抱っこするおばさんの体の動きのゆれる感じが、さっきよりも少し大きくなってきた。 
どうやらでこぼこの地面を歩いているらしい。
少し遠くに光がいっぱい見えている。
暖っかそうな光・・・
とつぜんだけど、ぼくのオマタをすっと風が吹き抜けた。
「男の子だよっ!」
「♂か!」
「何かちょっと安心した!」
「ぼくは男だい! 何か文句あるのか!? 
りっぱなもんがぶら下がっているんだぞ!」そんなことを考えていた。 

オマタのスーっとした感じが無くなって、またしっかり抱きしめられていた。
急にぼくの前が真っ暗になった。
さっきまで嗅いでいた土の匂いが強くなった。
おばさんのぼよんとした腕の柔らかい感触がなくなった。
気がつくとぼくは地面の上に立たされていた。
「本当にうちの子にしてもいい?」
おばさんの声が頭の上から聞こえてきた。
「この子が生きていくために必要なものは、ここにはないよ」、おじさんの声だ。
「ドンとレオは何て言うかな・・・ 受け入れてくれるかなぁ・・・」
「連れて帰ってみないとわからないし、こんな所に置いていけないだろ」
「君はどうしたい?」
おばさんは、突然ぼくに話しかけてきた。
「何だよ~!ごはんくれるんじゃないの?! ひどいよ! 
今さら、変なこと聞くなよ!!!」 思いっきり文句を言った。
「こんなところじゃ、生きていけないよね、当たり前だよね。 
茶畑の真ん中だし・・・ まだ寒いし・・・」
「とにかく、ウチにおいで。 帰っておいしいもの食べて・・・ あとは、それから」
どうやら、ぼくはあやうく茶畑の真ん中に置き去りにされそうになったらしい・・・
ところで、そのドンとかレオとかいう奴らは、一体全体何モノなんだ?

情けない話だけど、家が近づくにつれ、正直この子猫を家に連れて帰るのに迷いました。
あと、23分ほどでわが家に着くという頃家のそばの茶畑の真ん中で
「この子猫を置いていくべきでは。 連れて帰ってもいいのか?」
と急にいろいろな思いがわいてきたのです。
これから先、この子は家猫、それも室内飼いの生活に慣れてくれるのか? 
先住ニ匹が受け入れなかったら、等など。
でも5月とはいえ親のいないこの子が一人で、それも茶畑の真ん中で生き延びていける可能性は限りなく低いはず。 生き延びたとしても、ニンズ不信になってしまうだろうし。 

やはり出会うべくして出会い、抱き上げるべくして抱き上げた子。
半分うきうきしながら、残り半分は、「自分たちは何をしているのだろう」と一人ぶつぶつ思いながら、相方と夜の茶畑を抜けて家に向かったのです。


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